以下、Washinton postより要約。(この引用もとの記事の中央あたりのPhotoというところに各人物の写真が紹介されています)
★概要
・アリーナス(NBA選手)・・・この記事では「アリーナス」と表記します。
・父(Gilbert Arenas Sr.)・・・元スポーツ選手。俳優を目指すが成功しない。アリーナスが3歳になったとき、彼を引き取り、マイアミからカリフォルニアに引越しして育てる。アリーナスとは強い絆で結ばれている。この記事では「Gilbert Arenas Sr.」と表記します。
・母(Mary Francis Robinson)・・・高校のときに妊娠。卒業後アリーナスを出産。以後、クラック(コカインの一種)に溺れ、子育てを放棄。偽名を使い犯罪をした経歴がある。アリーナスのNBA2年目のシーズンにアリーナスと再会。この記事では「Mary Francis Robinson」と表記します。
・異父兄弟・・・7人もいる。アリーナスは会ったことがない。
・パートナー(Laura Govan)・・・元彼女。彼女との間に娘が一人いる。関係はほとんど破綻していて認知訴訟を起こすことを考えていたが、子供のことや裁判での疲れをきっかけに仲直りし始めている。この記事では「Laura Govan」と表記します。
★目次
・父との出会い
・父と母の別れ
・異父兄弟
・母との出会い
・母に対しての思い
・パートナーと娘
★父との出会い
Mary Francis Robinsonが子育てをしないので、彼女の祖母が興信所のようなものを使ってGilbert Arenas Sr.に電話をする。Gilbert Arenas Sr.は3歳のアリーナスを引き取りに行き、自分の家につれて帰る。その後、Gilbert Arenas Sr.の母がアリーナスの面倒を見つつ、Gilbert Arenas Sr.は俳優の勉強をする。アリーナスを引き取ってから3年後、Gilbert Arenas Sr.は俳優になるためアリーナスとともにカリフォルニアに行く。最初の3日は当てもなく、昼は公園で、夜は駐車場の車の中で過ごす。
Gilbert Arenas Sr.「俺たちはこのゲームを「Fly Away」と呼んだ。なぜそう呼んだかわからないが、この言葉を聞くとギルバートは笑った。「Woo-Woooo!」ってな。俺は実際どこかに飛んでいきたかった。日が沈むと「俺は何をやってるんだ」という気持ちになった。俳優になる手がかりも何もなかった。息子は俺が何を考えていたか知らなかった。そういうことを考えると涙が出そうになった。」
その後、運送会社で時給8ドルの仕事を見つけ、お金を借りてアパートに住む。
Gilbert Arenas Sr.「息子は幸運をもたらしてくれる子だった。俺が行く先々で、人々は息子を気に入り、俺たちの助けをしてくれた。」
アディダスのCMを撮影中のアリーナス「みんなは俺の父を見て「君は俳優じゃなかった。そういう経験がないからね。」と言うだろう。・・・たぶん父は俺のためにカリフォルニアに来てくれたんだ。俺にチャンスをくれるためだったと思う。父は自分の夢をかなえられなかったけど、俺が彼のやりたかったことを成し遂げた。俺がビッグになったから父もハリウッドでビッグになった。「君は映画のスターになれなかったな。」という感じで父を見る人がいたら、父はこう言える「俺の息子が毎日テレビに出ている。」って。・・・俺たち2人は馬鹿だ。そしてハード・ワーカーだ。・・・俺は彼でもある(I am my dad)。」
Gilbert Sr.「ギルの大部分は俺だ。そして俺の大部分が彼だ」
★父と母の別れ
Gilbert Arenas Sr.は高校時代はスーパーアスリートで「Gil the Thrill」と呼ばれていた。高校卒業前に彼女であるMary Francis Robinsonが妊娠していることを知る。
Gilbert Arenas Sr.「彼女には俺の家族のところに住んでほしかった。しかし彼女は自分でなんとかやっていきたいと言った。そして彼女はある人物(クラックを吸う仲間)に出会ってしまったんだ。」
Gilbert Arenas Sr.は地元のタンパに彼女とアリーナスを残し、フロリダの大学に行く。大学に入って最初の春休みにMary Francis Robinsonに会いに行ったが、彼女とアリーナスはプロジェクト(低所得者用の団地のようなもの)に住んでいた。
Gilbert Arenas Sr.「こんなところに住むべきじゃない、と思ったが、養育権がなかったのでどうしようもなかった。・・・ある夜、彼女の家に泊まったとき、彼女は友達とクラックを吸っていた。「何をやってるんだ、子供がいるんだぞ」と俺は言ったが彼女は「見ないで」と言った・・・俺はその場を去り、その日が彼女との最後の日になった。」
★異父兄弟
Mary Francis Robinsonは彼女の息子William "Blue" Robinsonと暮らしている。William "Blue" Robinsonはアリーナスからみて異父兄弟。幼少のころ2人は少しの間、一緒に暮らしたことがある。William "Blue" Robinsonの父は銃撃事件により死亡。以後、死亡した彼の母Wanda Hugginsは悲しみ、トラウマを背負い、フロリダに引っ越す。Mary Francis Robinsonも一緒についていくが、子育てを放棄する。代わりにWanda HugginsがWilliam "Blue" Robinsonの面倒を見ていた。結局、アリーナスには全部で5人の異父兄弟と2人の異父姉妹がいる(注・・・おそらくMary Francis Robinsonは8人の子供を出産したと思われる。)。
★母との出会い
GS時代の2年目にコート上で約20年ぶりに出会った。
「ギルバート、私はあなたの母親よ!」
アリーナスの体は一瞬硬直して、彼女のほうを振り返った。しばらくして近寄り、抱き合って頬にキスをした。
アリーナス「俺が子供のときに望んでいたことは彼女に会うことだった。神があの日チャンスをくれた。こういう(母がいない)状況になった理由は知りたくなかったし、昔何があったかなんて知りたくなかった。ただ彼女に会いたかった。それがただひとつの願いだった。」
Mary Francis Robinsonは知り合いからアリーナスが大学で活躍しているのを教えてもらい、初めてアリーナスの消息を知る。
Mary Francis Robinson「(夫が大学に行き、自分は子供と暮らしていた)当時、私は見捨てられたと思ったの。とても怒っていた。Gilbert Arenas Sr.と一緒にやっていこうとせず、自分のアパートを出たの。こうなるってわかってたらもっと違う行動を取っていたんだけど。・・・私の人生は幸せなものではなかった。表面上は幸せそうにしようとしていたわ。ジョークを言ったりしてね。でも心の中は傷だらけだったの。・・・ギルバートを本当にひどく傷つけてしまったわ。彼だけじゃなく私自身も傷つけてしまった。・・・彼のお金が必要と言うわけじゃないわ。ただ、彼には私が彼を愛していることを知ってほしいの。こんなことを言うのは正しくないことだけど・・、もし彼が私を許してくれるなら・・・」
★母に対しての思い
Grant High School in Burbank, Califの監督だったHoward Levine「どう考えても問題が起こる。母親の愛情を知らないという状況を想像してみてくれ。そういう子は人を信用しない。そういう子は「人々はきっと自分のことを見捨てるだろう」と考える。」
アリーナス「父は昔、俺に母のことを話そうとしたことがある。俺は「僕はそんなことは全然気にしてない。父さんが言いたいなら言ってよ。」と言った。父は「どうやって俺がお前を育てることになったのか知りたくないのか?」と言った。俺はそんなことを考えたことがない。過去のことだ。俺は前に進まなくてはいけない。・・・全ての人が親になるようにはできていない。誰も人を裁けない。父は俺によくしてくれた。だから俺は母のことを裁かない。・・・俺には世界を恨む生き方もできた。「母さんは俺を捨てた。」と言って、全てをそのせいにしていたかもしれない。でも俺はそうなりたくない。母は俺を17で産んだ(実際は18)。17だ。まだ女性になる途中だ。」
母親が「許してほしい」と言ったことについて
アリーナス「(少し考えた後)・・・みんな許すさ。・・・でも俺には24年の間母がいない状態だった。それはまるで他人のような気分なんだ。わかるかい?俺に何が言えるんだ?俺は母を恨んでない。それに、俺が子供のときの出来事のせいで全ての女性を恨んだりしない。」
★パートナーと娘
アリーナスにはLaura Govanという女性の間にIzela Semayaという娘がいる。アリーナスは娘をIzaや Cheylaという名前で呼んでいる。彼女たちはアリーナスの家から車で3分の距離の場所に住んでいる。Laura Govanはお金持ちの家の娘で、アリーナスより2歳半年上。GSの新人時代に知り合った。2年間付き合ったが、アリーナスがウィザーズと巨額の契約を結んだころから徐々に疎遠になる。アリーナスはワシントンで暮らし、Laura Govanはキングスやレイカースの広報部門のようなところで働く。アリーナスは2005年に彼女が妊娠していることを知り、その年のクリスマス・イブにオークランドの出産室で過ごす。
子供が生まれると2人の間で、養育権や認知や破綻寸前の2人の関係について口論になる。Laura Govanは攻撃的なベイエリアの弁護士を雇って、テレビの全国放送されるような認知訴訟を起こすとアリーナスを脅迫する。アリーナスは自分の雇った弁護士に「カリフォルニア州の認知や養育手当てに関する法律では、あなたはかなりの財産を失うことになるので、裁判所からの召喚には決して応じてはいけない。」とアドバイスされる。
ウィザーズのオーナーのエイブ・ポリンも味方になってくれた。
エイブ・ポリン「ギルバートのことは人間として、選手として尊敬している。彼は我々の期待をはるかに超え、この地域に不可欠な選手になった。」
Laura Govanによる国を横断しての執拗なアリーナス追跡劇が始まる。アリーナスは召喚を避けるため、偽名を使いひたすらホテルにこもる日々が続く。ウィザーズも組織としてアリーナスに協力する。
アリーナス「あのときからチームメイトが俺を尊敬してくれるようになったと思う。みんなは俺の抱えている問題を全部知っていた。俺はチームメイトに言った「俺は俺の問題のことに神経を使うつもりはない。コート上でのことに神経を使う。俺がバスケ以外のことを考えているなんて思わないでくれ。俺の抱える問題にはシーズン後に対処するつもりだ。」って。」
アリーナス「(逃げ回っていることは)ジョークにもなったよ。チームメイトはよく「ギルがまた走ってるぜ」とか「マトリックスみたいにうまく回避したな」とか。オークランド、サクラメント、ヒューストン、シカゴ、相手の弁護士のやつらはどこでも俺を召喚しようとした。俺は偽名を使い続けた。・・・相手の弁護士はこう言っていた「どんな手を使っても捕まえるぞ。アリーナスがフリースローを打つときになったら、コート上に出て彼の邪魔をしろ。絶対にだ。」ってな。本当にひどくなっていった。」
Laura Govan「私は弁護士を呼んでこう言ったの「召喚しなくていいから、彼を怖がらせて」って。するとギルはめちゃくちゃ極端な手段に出たの(He took it to World War II extremes.)。」
アリーナスはLaura Govanの父に電話して双方にとって有益な計画をつくってくれないか交渉した。その計画はLaura Govanがアリーナスの家の近くにすむというもの。Laura Govanは10000ドルをアリーナスに払わせて弁護士を解雇する。そして2人で子供を育てることにする。NBAシーズン終了後、アリーナスは認知テストを受ける。Laura Govanは今、2人目の子供(男の子)を妊娠中。
Laura Govan「私たちは時間とお金を本当に浪費していることに気がついたの。」
アリーナス「俺は常に問題の中心にいる。カオスにとても慣れてしまった。結婚をせずに子育てするか、Laura Govanとカップルのままでいるのかも今はわからない。困っている。女性がいないのに親でいるってことはとても難しい。特に、なりたくないタイプの親を知っているだけに。俺は俺の母親みたいになりたくない。全てのNBA選手のように子供に会わず養育費だけ払う親にもなりたくない。」
Laura Govan「今はまだ取り組んでる途中なの。今は意見が一致しても明日はそうじゃないかもしれない。私たちの問題のひとつは、ギルバートと私は2人ともとても頑固だ、っていうことね。・・・ある日口論して彼は家を出て行ったけど数分後に戻ってきたわ。「ごめん、どうしても(君の嫌がることを)してしまうんだ。俺は好きになった人全員を払いのけてしまう。それが俺なんだ。」って言ってね。」
アリーナス「それは本当だ。気がつくといつもそうやっている。それが誰が本当のことを言っているのかを知る唯一の方法だと俺は思う。嫌われるようなことをしてもまだそばにいてくれる人は、信頼できる人だ。嫌われるようなことをしてどこかに行ってしまう人なら、信頼できない人だ。」
バスケットについて語るアリーナス「コートは俺にとって、俺の全ての痛みを体から取り除く場所だった。聖域、痛みのはけ口になった。多くの男性はそういうものを持っていない。女性の多くは俺たち男性には悩みを話し合える仲間がいないということを知らない。俺たち男性はそういうことは話さない。だから俺たちは多くのストレスを抱えている。だからゴルフやストリップ・クラブに行ったりする。俺の場合はバスケなんだ。」
★感想
アリーナスがホテルにこもるのは、認知訴訟が理由のひとつとしてあったんだ・・・とか、マイスペースでの写真に載っていた赤ん坊は娘だったのか、とかいろいろ明らかになった。Wizznutzzの管理人は弁護士の追跡&妨害のせいでキャブズとのプレーオフでフリースローをはずしたんだ、と冗談を言ってますが。
胸が痛くなる場面もありましたがすばらしい記事でした。
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