MLBの収益分配制度
MLBは、NBAより収益分配額が多いらしい。ただ、それでも問題はある模様。簡単にいえば、勝ちにいかなくても金は入ってくる、という点。
昨年、ピッツバーグ・パイレーツの財務データが漏洩して、勝利を目指さず金稼ぎに露骨に集中していることが発覚した模様。今回読んだ記事は、その事件をもとに現在のMLBの収益分配制度に関する問題を論じた記事。去年の8月の記事ですけど、知らなかった。理解する目的で、とりあえず訳してみた。
感想としては、NBAの収益分配制度が改善されても、パイレーツのようなことをやりそうなチームは出てきそうな気がする。ラプターズあたりがしそうだぜ。ラプターズはバスケチームというより明らかにファンドですから。
以下、記事。
■パイレーツの判断
MLBの収益分配制度に関する問題に対して、ひとつの解決策を提示している記事。
・スモールマーケットのチーム、ピッツバーグ・パイレーツについて、筆者「パイレーツは、「金がない」と言いつつ、18年も負け越しシーズンを記録した。だが実のところは利益をあげ続けてきたチームだった。・・・パイレーツの2007年から2008年の財務データがこのほど漏洩して公開され、大批判をあびている。「我々はリーグ制度の犠牲者だ」と言いつつ、毎年のようにスタメンを放出してきたパイレーツが、実はMLBでもトップクラスの利益を手にしていたのだ。07年と08年合計で約3000万ドルの利益を出していた。その期間、彼らは収益分配制度により合計約7000万ドルを受け取っていた。」
・今の収益分配システムの問題点について、筆者「パイレーツは極端な例としても、今の収益分配制度の主な問題は、(当初の目的である)都市間のチームの強さを均衡化できておらず、選手への投資からのリターンが低くなるように作られている点だ。結果として全体的に選手の年俸も抑えられている。」
「詳しく言えば、現行システムの問題点は、分配する側のチームと分配を受け取る側のチームを決める際、(マーケットの規模を考慮した、本来その都市が生み出せるであろう)潜在的な仮想の収益額ではなく、実際の収益額が使用されていることだ。よって現実には、スモールマーケットで成功を収めたチームが分配する側になり、大都市でまずい運営をしたチームが分配を受け取る側になる場合がある。その大都市チームは何も代償を払っていない。・・・制度成立初期、大都市にあるフィリーズは分配を受け取る側だった。一方、スモールマーケットながら強かったクリーブランド・インディアンズは分配する側になった。このように、強くなっても実際の収益額が使用されていては、チームの強くなろうという気を削ぐ。勝って収益を増やしても分配する側になり、収益が減るためだ。結局、ゼロサムゲームなのだ。そこで、パイレーツは勝ちにいかないという選択をした。」
「今の収益分配制度は、限界収益が低くなる制度だ。例えば、クリフ・リーと契約したいとして、契約した場合、チームの勝利数は6勝増えると仮定しよう。1勝につき400万ドルの収益が増えると仮定すれば、リーは(6×400で)1年あたり2400万ドルの価値があることになる。本来はこの金額をもとにこの額内でオファーをする。だが自チームが分配する側のチームと仮定した場合、リーグ規定の31%をリーグの(分配)プールに入れないといけない。すると、(2400×約30%=約800をさしひいて、2400-800で)リーには実質1600万ドルの価値しかないことになる。この額をもとにオファー額を決めることになる。これがMLBにおける収益分配システムの真の目的だ。選手への投資収益を低くして、スター選手へ高い年俸をオファーできなくする。そして、その他の選手の年俸額を全体的に下げる。MLBの収益分配制度の真の目的は、戦力均衡化ではなく、年俸額低下だ。」
「このやり方は非常に成功している。MLBは現在、4大スポーツの中で、収入における選手への支払額(選手への支払額÷総収入)が一番低い。スター選手の年俸額はここ10年、それほど変化してない。2000年時のAロドリゲスの平均年俸額は2300万ドル、今のスター選手の平均年俸は2500万ドルだ。たいして変化していないのは、収益分配制度のせいだ。」
「今のシステムの欠点は、(本来の目的である)チーム間の力の差を均衡化できてない点だ。人件費を抑えて利益を得たがる、収益受け手チームを増やすだけだ。彼らは、収益を低くしておけば、大都市のヤンキース、レッドソックス、カブズ、ドジャースから金をもらえることを分かっているのだ。パイレーツが今回したことは道徳的にひどく、不誠実という度合いを超えている。しかし、金稼ぎという点から見れば、リスクをおかして勝利を目指すよりも、安定した利益を出したいというオーナーにとって合理的な行為だ。」
・問題の解決法について、筆者「このシステムを改善するには、年俸額抑制機能という点を捨てるようにしなければいけない。大事な点は、各都市間の(本来その都市が生み出せるであろう)潜在的な収益額の差を埋めるようにしなくてはいけない点だ。識者を集めて、いい制度を作らなくてはいけない。まずブロンクスやボルチモアあたりで実験して数値を出して、それをもとに、各都市の(本来その都市が生み出せるであろう)潜在的な収益を数値として出さないといけない。ロイヤルズとフィリーズという(野球チーム間の)差ではなく、カンザスシティーとフィラデルフィア(という町の間)の差を均衡化するようにしないといけない。」
「また仮に、あるチームが勝利より金稼ぎに走っても、プールに金をいれさせるなどして、この制度を使って罰してはならない。同様に、大都市のチームが馬鹿な運営をしても、この制度を使って罰してはならない。収益分配制度は、失敗への罰や成功への報酬の手段として使ってはならない。ただ戦力均衡化のツールとしてのみ使用されるべきだ。」
「このようにシステムが改善されれば、パイレーツは他のチーム同様、勝つ気になる。彼らががんばって稼いだ金は自分たちのものになるからだ。稼ぎが減らされることはない。・・・パイレーツを批判の的にするのは簡単だが、それなら他のオーナーや、何年も前から今の制度を主張してきたコミッショナーのバド・セリグも批判したほうがいい。パイレーツの判断が悪いのではない。そういう判断を合理的なものにしている制度が悪いのだ。」
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コメント
やっぱり桑田の獲得も金儲けのためだったのでしょうか
安い年俸で大量のジャパンマネーが入ったと思えばかなり賢いですねぇ~
投稿: ジェシー | 2011年1月20日 (木) 17時59分
当然それは獲得の一因じゃないすかね。日本人選手が一人入るだけで、まずそのチームの試合は日本で放送されるようになりますから。パイレーツ入団のときも実際そうだったし。
投稿: たつお(管理人) | 2011年1月20日 (木) 21時58分